2022.03.14
日 時
2022年3月11日(金)13時30分〜
会 場
日本生活協同組合連合会 コーププラザ特別会議室NO2
協議事項
2022年度活動計画
(1)年間スケジュール
(2)2021年度会計監査及び2022年度第1回幹事会について
(3)2022年度総会及び第48回物流研究会について
(4)研修(海外視察又は国内視察について)
(5)第25回トップ研究会について
(6)第3回幹事会について
(7)分科会活動について
報告事項
2022年度年会費納入について
日時
2022年3月11日(金)
会場
日本生活協同組合連合会、コーププラザ特別会議室NO1
演題
渋澤栄一の「論語と算盤」で未来を開く
~ポスト・コロナの持続可能な社会と企業経営~
講師
渋澤 健 氏
シブサワ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役CEO
※渋澤栄一氏の玄孫
講演内容
7月に続いて2回目のオンライン講演会です。今回は渋澤健講師により、高祖父で日本資本主義の父と呼ばれた渋澤栄一氏の講話集「論語と算盤」の「言葉」を通じて、我々がなすべきこと、進むべき未来についてお話をいただきました。
その中のいくつかをご紹介させていただきます。
●渋澤栄一氏の残した言葉を振り返ると、実はかなり怒っている
その怒りとは、もっといい社会になれるはずだ、もっといい会社、もっといい組織、もっといい
経営者、もっといい一般市民になれるはずだという「思い」からで、現状に満足せず常に未来志向を
持っている栄一氏の未来志向のエッセンスは今の時代にも通じる。
●資本主義ではなく「合本(がっぽん)主義」
渋澤栄一氏は、資本主義という言葉は使わず、よく発していたのが合本主義という考え方。
一部に富が集中するのではなく、みなで共感・共助をして事業を行ない、成果をみなで分かち合い
豊かになるという「公益を追求する」という使命や目的を持った考え方。欧米が着眼し始めた
「ステークホルダーキャピタリズム」に言い換えることが出来る。
銀行は大きな河のようなもので、銀行に集まってこない金は溝に溜まっている水やポタポタ垂れて
いる滴と変わりない。折角人を利し国を富ませる能力があっても、その効果はあらわれない
(第一国立銀行株主募集布告より/明治6年設立の日本初の民間銀行)
●岸田総理の政策である「新しい資本主義実現会議」※渋澤講師は有識者構成員として参加
・「新しい資本主義実現会議」のキーワードは「人的資本の向上」と「成長と分配の好循環」。
ただし人的資本の向上が無ければ好循環は生まれない。
・今最も可視化されていない企業価値は「人」であり、人件費の確認だけでない人の価値を
正確に可視化する必要がある。
●サステナビリティとインクルージョン
論語と算盤、合理的の経営
・サステナビリティ=持続可能性。未来に向けてよりよい社会を継続するために算盤は必要だが、
算盤だけではどこかでつまづいてしまうかも知れない。IT革命以降、世の中がどんどん変化
していく中、論語しか読まないのも問題。論語と算盤は車の両輪で、片方が大きくても小さくても
いけない。
・渋澤栄一氏の考えたインクルージョンは「結果平等」ではなく、富の分配平均などは思いもよらぬ
空想であると述べている。努力する人、しない人、向上心のない人が一律に恩恵を受けるのでなく
それぞれの努力がそれぞれに報われる社会を目指すとしている。
※インクルージョンの直訳は「包括」「一体性」という意味の言葉。ビジネスにおいては、所属
している人の全てを組織が受け入れ、各々の能力や経験・考え方が認められて、その力を活かす
ことが出来る状態を指す。
●「か」の力と「と」の力
「か」は1か0か、右か左かなど取捨選択に適しているが、既に存在している状態を比べて進める
「か」の力では新しいクリエーションやイノベーションは生れない。取捨ではなく、一見相容れない
異分子を合わせようとする「と」の力が必要。
●「と」の力とSDGs
・SDGsは「できるかできないか」という「か」の問題ではなく、「と」の力の結集こそSDGs達成に
必要。
・企業のSDGsの取り組みについて、いまの事業の延長線上では見えなかった新しい価値の可能性が
17の世界的目標の中に散らばっていることに意義がある。SDGsは新しい企業価値を発掘する
ツールとして活用すべき。
・SDGsは未来から逆算して立てられた計画または挑戦を意味する「ムーンショット」である。
※ムーンショットは、1962年にアメリカのジョン・F・ケネディ元大統領の「月面の人類着陸を
60年代に実現させる」と宣言したスピーチからきている。ビジネスでは「困難で飛躍であるが
実現すれば大きなインパクトが期待出来るプラン」を意味する言葉として使われている。
●グレートカンパニー経営者の共通点
「智、情、意」の3つの側面をきちんと持っていること。「智」として、自社の経済エンジンとして
何が回っているかを知っているか。「情」として、それを動かす情熱が必要。「意」として、
ニッチ(小規模な市場)でも良いから世界一になることをベストなバランス感で捉えていること。
また、それぞれの概念のベストな場所が中庸(必ずしも真ん中ではない)の概念であり、企業
経営における中庸を見つけには、違う次元から算盤を見ることも重要。
●企業のパーパス(存在意義)の俯瞰力
・ビジョン=Whereはどこに向かうか?ミッション=Whatは何をしているか?、バリュー、
ブランド、戦略=Howは、どのように行なうかを指している。
・パーパス=Whyは、何故我々は存在するのか?指していて、これに対する答えを持つことが
重要。Whyであるパーパスの部分は、まさに経営に大事な「俯瞰して見る」
●見える未来と見えない未来
・歴史は繰り返さないがリズム感があり、周期性から未来を考えることは出来る
1960-90 | 繁栄の30年 | 高度経済成長、Made in Japan |
1930-60 | 破壊の30年 | 第二次世界大戦⇒戦後 |
1900-30 | 繁栄の30年 | 西欧社会に追いつく |
1870-00 | 破壊の30年 | 江戸時代の終焉⇒明治維新 |
・新型コロナ感染症により、世界が同時期にストップした2020年は破壊の年?このリズムを
繁栄に変えるスイッチが必要で、スイッチをONにするためのイマジネーションが重要。
・Made in Japan⇒Made by Japan⇒Made with Japanへ
日本が世界に対して接続可能な豊かな経済社会を一緒に作ろうという意思表明。
・少子化の中、世界とつながり、SDGsを大切にしながら、Made with Japanを創造出来るで
あろうデジタルネイティブ(Z世代)の若者たちに期待。
お話しの中にもあった「周期性」で言うと、2021年・2022年は繁栄の周期のスタートライン
だったかも知れませんが、新型コロナ感染症はグズグズと収束出来ず、その上、ロシアによる
ウクライナ侵攻が始まり、コロナに続き世界を巻き込む破壊の周期が延長されるのかも知れ
ません。しかし、そんな時こそ「との力」を以て、「コロナとWithコロナ」「コロナと経済」
または「戦争と平和」について「自分ごと」として関わる姿勢や勇気を持つことが大切である
ことが再確認出来ました。あらためて「論語と算盤」に感謝です。
尾辻会長、開会挨拶 司会進行、猪俣部長 渋 澤講師(右手) 講演の様子
シーエックスカーゴ